沖正弘とは
著者の龍村さんが師事された沖先生は、戦後日本におけるヨガの草分け的指導者で、その普及に努め、ヨガブームを作った立役者です。
第二次世界大戦中、参謀本部の特別諜報員としての必要上、東西医療法と各種教宗派の修行法の特別訓練を受け、モンゴル、中国、インド、アラビア各地に赴いた。戦後も探究心から中国や東南アジアに渡って医学と宗教を学ぶ。1951年、ユネスコ平和建設国際奉仕団日本代表としてインド、次いでパキスタンに赴き、医療面、福祉事業面で活動。この時、釈迦、ガンディーを悟りに導いた教えがヨガであることを知り、ヨガ哲学へ熱烈な探究心を向けた。また腸癌の診断を受けるに及び、心身改造の目的でその行法にも専心するに至る。(Wikipediaより引用)
だから沖ヨガでは、インド哲学やヨガに世界各国の思想や養生法が取り入れられています。
また、食べることを含めた生活全般を扱っていることから「総合ヨガ」とか「生活ヨガ」とも呼ばれています。
第4章と第5章
この2つの章では、沖ヨガ独特の言葉や考え方がたくさん出てきます。
第4章の丹田力と仏性力はヨガというより武道とか仏教の考え方です。
基本的なことは同じなのですが、日本人向けに具体的に編集されている感じです。
沖ヨガの合宿に参加したとき「栄養摂取の誓い」というマントラ(?)を唱えたのですが、これはうちこさんとの読書会でおやつの前に唱えるギーターの一節と似たものだそうです。
沖ヨガの道場では、朝起きたときから寝るときまで、「誓い」を唱えるようです。
古今東西のいいところを日常生活に落とし込んでいます。
体は乗り物
インド哲学の「体は乗り物論」を馬車のイラストで分かりやすく説明してあってうれしかったです。
イラストは著作権の関係で載せられませんが、素晴らしいです。
自分は
・車主=車の所有者=主人=アートマン
・御者=運転手=ブッディ(覚性・精神性・仏性・思考の制御力)
・手綱=ハンドル=マナス(意思・試行期間・諸知覚の制御力)
・馬=エンジン=インドリア(諸知覚器官=眼・鼻・舌・耳・身)
・車体=ボディ=シャリラ(肉体)
人生は道路=諸知覚器官の対象となる
インド哲学での自分とは何か、生きるとは何かをこんな風に説明してあります。
ブッディとマナスがこころの部分になるのでしょう。
インドリアは馬なのだから、勝手に動かしてはいけません。欲望の制御ですね。
肉体は自分という存在の本当に一部分でしかありません。
自分の本体・肉体・心
第5章では自分らしく生きること、そして自分とは何かについて書いてあります。
いいことがたくさん書いてあったので、覚書として引用します。
自分の本体は肉体そのものではなく、それを生み出した大いなる力の一部分、すなわち自分に分け与えられたものなのであり、それがこの肉体と心を仮の住まいとしてこの世に生まれた 。だから、肉体や心の欲求や動きにとらわれず、また社会環境に惑わされず、それらを統御して本来の意思=宇宙意志=神の意志と一体になるまで修行し続けることこそ生きる道だと理解したのです。P239
梵我一如の思想です。
物質進化の観点に立てば地球始まって以来いや宇宙始まって以来の全てのご縁があって初めて私たちは今ここに存在しているのです 途方もないことですがこれは事実ですですから自分はそれだけ尊く貴重な存在なのだという認識がわたくしたちには必要なのです。P237
誕生したことが、奇跡的なのです。祖先を敬うのですが、祖先も全部自分の中に入っています。
つまり自分を大切にすれば、祖先を敬うことになるって考えるのは、自分勝手すぎるかしら。
祖先の生き方がわたくしたちに影響を与えたように、私たちの生活のあり方が、そのまま未来の人たちや地球の全てに大きな影響を与えます。P240
自分勝手に生きてはいけないと、地球環境や公害についても思いを馳せています。
自分の子供のいない人でも、もう子育てを終わった人でも、次の世代のことを考えての行動を心したいです。
ヨガでは「神を内に見よ」「目を内に向けよ」というだけではなく、実際「神を内に見る」にはどうすれば良いのかを具体的に教え、また同時に自分で求道、実行して自分でつかめと戒めているのです。これを「(教えを)信じるな(盲信するな)疑うな(実行して)確かめよ」と表現し、学びの基本原則としています。P246
断捨離のやましたひでこさんからこの言葉を聞いて、私は感銘を受けました。
「信じるな。疑うな。確かめよ」
人のうわさなども、信じないけど疑うこともしません。自分で確かめるまでは。
そういう生き方で、確固とした自分軸を作ることができます。
本や人の言葉を鵜呑みにしやすい私に、ちょっとたちどまることを教えてくれました。
古代から言われる「悟り」や「解脱」は特別のことではなく誰でもが到達できる人間の状態であり、人が真にその与えられた個性を生かして生きること、身・心・霊が調和した生き方、最も自分らしく生きることに他ならないのです。P246
ヨガの目的は「悟り」と言われますが、それが聖人君子でなく普通の人間にも心がけ次第で可能だということです。
その方法は、章のタイトルになっている
自分らしく生きること
です。
ヨガ的生活について具体的に事細かく書いてあります。
体操・呼吸法・心の持ち方・日常の工夫なども興味深かったです。
近くにヨガ道場がない人でも、これが独習本になりそうです。
私も手元に置いて、読みなおしたくなります。
すぐ忘れてしまうので、こうしてブログに書いておくことで、また読み返すことができます。