70歳過ぎて自在に生きる ほいみんの日記

断捨離から、ヨガ・インド哲学・音訳へと関心が移っています。

本一冊に込められたあれこれ 夏目漱石を核にして出版よもやま話

ブックデザイナー

祖父江慎さんは本全体をデザイン。

装丁家というと表紙デザインをする人と思っていました。

ブックデザイナーの祖父江慎さんは、

字体や組み方、紙の質感まで全部をデザインされているそうです。

組み方とは行間、字間、上下の隙間から何からを決めることです。

そう言われればそうです。

 

そんなふうにデザインされた本を、

もっと大切に愛でたいという気持ちになります。

 

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夏目漱石

明治時代、文章の書き方や本の組み方は規則がなかったのが、

出版物が増えるに従ってルールが出来てきたそうです。

面白いお話がどんどん出てきて引き込まれました。

吾輩は猫である』では回を追うに従って、

句読点がつき、カギ括弧がつきなどのルールが固まっていく様子がわかるとのこと。

坊っちゃん』ではだいたい統一されている様子などが面白いそうです。

さらに『こころ』では、タイトルの表記でさえ、漢字やひらがなが混在。

文中でも場面によって違うことが当然として許されているんですって。

扉の「心」の漢字は漱石のデザインした創作文字だなんて面白い!

 

今は当用漢字という決まりがあり、読み仮名や送り仮名に「正解」があります。

明治時代は本当に鷹揚だったのですね。

音訳で明治時代の本を読むことの参考になるお話が続きました。

 

本の作り方

現代の作家さんでも、ページをまたがるような文章を避ける方もいるそうです。

ページの終わりは句点で終わっているなんて、

美しいです。

本に込めた作家、、編集者ブックデザイナーの思いは、

声だけで届ける音訳では表現できない豊かな本の世界です。

見えることが恵まれていることに思いを巡らしました。

 

自由な豊かさ

例えば筆がのってくると、漢字を間違えたり、

意識的に誤字を使うこともあるそうです。

漱石は悩むを 「脳む」 と書くなんて例を挙げていました。

音訳のときにはどうしたらいいのかなって考えながらお聞きしました。

出版社ごとの対応の違いなんかの話も面白かったです。

それにしても、間違えがあってもそれをそのままにする、

正解を求めることばかりを教えられてきた頭には、

刺激的です。

音訳には正解がない、といわれ戸惑うのですが。

正解がない世界にある豊かさを知り始めたとも言えます。

 

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