70歳過ぎて自在に生きる ほいみんの日記

断捨離から、ヨガ・インド哲学・音訳へと関心が移っています。

『あちらにいる鬼』井上荒野 著 瀬戸内寂聴さんを偲んで読みました 出家の真相をしりたくて

寂聴さん

瀬戸内寂聴さんが亡くなりました。

99歳。

人気女流小説家が出家した騒動を覚えています。

1973年に51歳で今春聴(今東光)大僧正を師僧として中尊寺において天台宗で得度、法名を寂聴とする。Wikipediaより

 

私はその頃21歳。

51歳、もう恋愛は卒業なのね。

と思った覚えがあります。

でも、その時も恋愛の真っ最中だと言うことを知りました。

ある記事に

井上光晴との不倫を精算するための出家」と書いてあったからです。

 

井上荒野さん

井上光晴さんの娘さんで作家です。

『あちらにいる鬼』は井上光晴さんをめぐるものがたり。

 

 

作中の作家は白木という名前。

瀬戸内寂聴さんは「白木」から「私の男」と呼ぶようになります。

奥さんは「白木」そして物語が進むと「篤郎」と呼びます。

わたしは・・・と書き出していても、その「私」が寂聴さんなのか奥さんなのかすぐにはわからない。

交互の立場で物語が進んで行くのです。

 

娘も作家

作家の男、作家の愛人女流作家、作家の妻が主な登場人物。

荒野さんは作家の娘であり、作家の妻はお母さんになります。

それをここまで突き放して書くことができたのを、

林真理子さんが賞賛していました。

小説家としての覚悟が見え、力量も素晴らしいという所だったと思います。

この本を書くにあたって、寂聴さんにも取材したそう。

寂聴さんも、もっと聞いてちょうだいとおっしゃっていたと。

修羅場ではないんです。

小説を読むと良くわかります。

 

愛する

寂聴さんと光晴との物語は、離れられない愛情。

光晴にとって奥さんは、温かい家庭を渇望する光晴の絶対失いたくない愛の対象。

奥さんのことを「美人で料理がうまい」と寂聴さんに自慢する。

出家後ですが、自宅に招き奥さんの手料理を寂聴さんにふるまう。

後日寂聴さんは料理のレシピを奥さんに電話で聞いてみたりする。

それぞれピリピリと心が揺さぶられる。

でも表面上は穏やかに友好関係が深まっていくのです。

 

光晴なき後

光晴の骨は、寂聴さんの斡旋で寂聴さんゆかりの墓地に納骨されます。

奥さんも死後そこに入ることを希望します。

今度なくなった寂聴さんのお骨もその傍に納骨されるのでしょう。

一人の男を愛し、愛された3人が同じ墓地に眠ることになるのです。

 

苦しい思いもたくさんあったと思いますが、

幸せで「人を愛した」豊かな人生だったでしょう。

 

3人の生き様が胸に深く刻まれました。

ご冥福をお祈りします。

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ブルーベリーの紅葉とツワブキ