70歳過ぎて自在に生きる ほいみんの日記

断捨離から、ヨガ・インド哲学・音訳へと関心が移っています。

【女文士】林真理子著 おもしろくて一気読みして いじらしさが胸にしみました

真杉静枝

宇野千代さんと同年配の眞杉静枝さんがモデルになっています。

林真理子さんがどの程度フィクションにしているかわかりませんが、

少女時代を過ごした台湾まで取材されて書いています。

たぶん林さんは宇野千代さんにも取材されたんだろうと思います。

宇野さんがよく登場してきます。

登場と言えば、静枝が関係した文士達が有名人ばかり。

最初に愛人になったのが武者小路実篤

その後同棲した中村地平や結婚した中山義秀も文士なのですが、

私は知りませんでした。

でも地平が連れてきた友達が太宰治だったり、

義秀の友人として丹羽文雄、石川達夫、小林秀雄など綺羅星のようです。

小林秀雄はひどく酒癖が悪いって書いてあります)

結婚式には横山利一や久米正雄なども加わり、文士達が勢揃い。

 

静枝はその中で女文士として生きたのです。

 

美人で筆も立つ

ネットで写真を見ましたが、そんなに美人とは思えませんでした。

でも作中にもプロフィールにも美人作家とあるのです。

美人かもしれませんが、中途半端だったのでは。

美しさも文才も人並み以上だったけど中途半端だった、

それが静枝の不幸だったように思います。

美しさは細微にわたるべきなのに、身だしなみや生活のだらしなさから

男に愛想づかしされたのではないでしょうか。

文士に憧れ文士の中に生活し、女流作家の仲間に入れてもらったのに、

作品は大して評価されなかった不幸があります。

そして自分よりも相手の男性を大事にしすぎてしまうから、

自分の小説(作品)に精力を注ぎきれなかったとも言えます。

 

なまじっかの美しさとか文才は身を滅ぼすのです。

装幀 装画 金子國義さんです

なよっとして、下を向いています

植民地育ち

生まれ育った環境は性格に大きく関わります。

静枝は日本の植民地だった台湾で大きくなり結婚します。

夫から逃げて台湾から日本に渡り、

以後一人で生きていくのです。

南国っぽい情の深さとエキゾティシズムで男性を魅了するけど、

奥ゆかしさとか細やかさがなくて、愛想づかしされます。

名家の生まれの地平が、静枝の整えた正月の膳に落胆する場面があります。

比べられる静枝もかわいそう。

その後なんとか機嫌をとろうとするのが、いじらしい。

 

「怯え」からくるいじらしさ

女流作家の仲間にいれてもらっても、

静枝には溶け込めきれないところがあったと思う。

林真理子は静枝を晩年身の回りの世話をした秘書の目で書いています。

金策や薬(ヒロポン)の調達にかけずり回らされる。

それでも心底から突き放すことが出来ないのは

静枝が「自信」と「怯え」の2面をもっていて、

「怯え」の部分では本当にいじらしい顔を見せるからでしょう。

静枝が恐れていたのは主に

・男に捨てられる

・いい作品を書く才能がない

 

その現実を見てみないふりをし、

現実から逃げ出すためにヒロポンを打ち続ける。

そんな女性に描かれています。

そんな女文士だったのだと。

 

今はもう文庫本しか出ていないようです。