書評集
松本裕子さんによる書評集です。
初出は「サンデー毎日」や朝日ジャーナルなどの週刊誌や月刊誌です。
読んでおもしろかった本を読者と分かち合いたいのです。
本の魅力を語ることで、本を読む快楽を共有したいと「誘惑」することが狙いです。
と同時に、
どんな本を好み、それをどう読んだか。・・本書は過去の自分の目印にもなっている 。それに、読後感を書き留めておくと、その内容も、味わいも、より鮮明に、印象深く記憶に残る。
私がつたなくてもブログを続ける意味も、ここにあります。
インプットだけなら受動的です。
読んだり見たりすることを、自分の言葉で書くことで、自分の頭で考えることが訓練されるのだと思うのです。
創作する人へのシンパシー
松本さんは、職業として文芸作品を書くことに疑問を感じた時、美術全集を広げたそうです。
美術の大胆な意匠や精密な筆遣いに鼓舞され励まされてまた書くことに挑みます。
私は創作でしか救済されないことを再確認
彼女の抱えた闇、現代社会への問題提起が作品になって、私たちに提供されます。
この書評集でも、本の内容とともにそれを書いた作者への目配りがあります。
同じ創作に携わる人として関心があるのでしょう。
女優とテレビに出る人の共通点
松本さんはテレビの人気番組でレポーターや天気解説をしていました。
でも、やりがいが感じられなくなっているとき、自分と映画の女優さんとの共通点を見つけます。
人の台本通りに動き、人が考えた台詞を話す空しさ、作りものの外見だけで理解される絶望
華やかな成功と表裏一体の不幸な生涯は、マリリンモンローをはじめ現在でもその例は多いです。
そこで松本さんは決心するのです。
人が作った意図の通りに動く人形でいるよりも、自分の言葉で何かを表現したい
本を読む快楽
子供の頃、家にあった全集を読みふけった松本さんは、
心底おもしろかった本を読み終えると、例によって私は、しばらくの間、ぼおっとしている。身体の底で揺れている余韻の波に身をまかせ、少ししんみりしたり、物思いに耽ったりする。そうして、読後の不思議なひとときを、愉しんでいる。
こんな風に読み終わった浮遊感の中で、身体の中に何かが広がるのを感じます。
それが「幸福」なんだろうと思う瞬間なのだそうです。
この快楽を人に与えられる「いい本」を書きたいというのが松本さんの願い。
コロナ感染の中、外に出かけることが少なくなりました。
でも、読書で得られる快楽があることを、もう一度思い出させてもらいました。
じっくり本を読んで、読後の自分にどんな「浮遊感」が得られるのかを確かめたくなりました。
紹介された本は、魅力的でした。
こんな本