物書きになってからの悪戦苦闘
松本侑子さんのエッセイ集を読みました。
松本さんは学生時代からテレビのニュースショーのレポーターでした。
大学ではデイベート部に入っていたので弁も立ち、容姿にもすぐれています。
表舞台で活躍していた人です。
それが、
最初の小説が評価された後、家にこもって「書く人」になります。
その辺のことが書かれていて興味深かったです。
素人がいきなり物書きになってからの最初の三年間の悪戦苦闘というか試行錯誤
報道というかテレビの世界ではある程度のキャリアがあり、 他の局からは好条件でのオファーがあったそうです。
でも本当にやりたいことは、笑顔を振りまくことではないのです。
自分の内面を厳しく探りながら、世の中の不当なことに異議を唱えることなのでしょう。
その辺のことを対談で話しています。
でもね、「いざとなったら、バイトをしてでも小説を書きますから」って言ったの。やっぱり作家の仕事で頑張ろうとあらためて決意したとき、わたしはお金よりも、本当にやりたい文学を追究して生きることが幸せだとわかったんです。
本当の幸せを求めて、書く人になったのです。
赤毛のアンの翻訳
私が松本さんを始めて知ったのは、『赤毛のアン』を英語で学ぶNHKの学習番組でした。
その時はとても上品できれいな英語の先生だなぁという印象でした。
それが、彼女の本をいくつか読むうちにどんどん違う見方をするようになりました。
フェミニズムについて活発に発言し、本も書いています。
アンシリーズの翻訳では、膨大な資料を調査して英文学の古典からの引用を解明しています。
アンの言葉の端々にちりばめられている詩句が、シェークスピアや有名な詩人のものなのです。
それを、インターネットを駆使し丹念に調べ上げて翻訳に反映させています。
そんな作家活動は、生真面目と言うことばが似合うように思います。
デビュー作では拒食症を扱いました。
女性故に背負っている荷物を、えぐり出し直視する仕事をしています。
それでいて、容姿は「たおやか」なまま、凜としています。
彼女のこと、もう少し追いかけたいと思っています。