生命科学者とことば
柳澤桂子さんの他に、女性の生命科学者として中村桂子さんも有名です。
芥川賞作家の木崎さと子さんとの往復書簡を読みました。
この本を読んでわかったのは、木崎さんが理系にも造詣が深いこと、そして科学者の中村さんが、わかりやすく科学を説明するための言葉にとてもこだわっていることです。
多様性
中村さんは生きる喜びを感じなくなっている若い人たちを憂います。
先進国にはびこっている無力感の理由を考えて
異質なもの、異質な人を拒絶してしまうことで安心感を得ようとしているように見える若い人たちに、生きるって、そんなにきれい事じゃないんだよ、もっとゴチャゴチャしたものだんだよと言いたい気持ち。
いろいろな生き物がいることに意味があるのであり、異質な物があるからこそ生きられる。
ここにも多様性の必要性が何度も書かれていました。
自分が正しいと思いがちですが、自分も多様性の一部分をなしている構成分子のひとつだという自覚が必要です。
自分と違う人がいてこそ、全体が成り立っているし、自分を苦しめる人の存在が自分を省み客観的に俯瞰する目をもつ起因にもなります。
生きることが「苦しみ」だと認識したら(インド哲学ではそれが大前提)、苦しみがあるから生きる喜びも感じられることになります。
「こんなこと、自分には理解できない!」と思ったところから、心の世界が広がっていくと考えたらいいのかもしれないです。
言葉そして活動
往復書簡を通して、言葉とか想像力がどんな力を持っているか、どのように表現したらわかりやすく伝えることが出来るかの考えを深めていきます。
それは言葉に力を与えることだともいえます。
私には一度読んだだけでは理解できない、抽象的な議論も多いです。
理性的な二人は、自分の「想い」が届くかしらと心配しながら考えを綴ります。
その「想い」を的確に受けて、さらに考えを進めてくれた返信に、我が意を得たりと喜ぶ場面も多く出てきます。
お二人に共通するのは、生きている一人一人(=の命)が素晴らしいことを自覚して欲しいということだと思います。
その思いで幅広く活動もしていることにも感銘を受けました。
調べたところ、
木崎さと子さんは小説以外にも、ノンフィクションから童話へと執筆の幅を広げています。
中村桂子さんは児童向けの科学雑誌や漫画の監修を積極的になさっています。
子供たちへの語りかけに力を尽くしているようです。
日本のというだけでなく、人間の将来を見据えた活動です。
私も身近に小さな子供がいます。
できることは何か、考えたいです。