*ヨガセンターでお借りしました。
柳澤桂子さんのこと
過去に何冊か著作を読みました。
『二重らせんのわたし』に感銘を受けて、『いきて死ぬ智慧』なども手元に置いてあります。
こんな素晴らしい女性が日本にいるのかと思い、その生き方を追い続けたいと思っています。
サイエンスライター
生命科学者として最先端の研究をしていたのですが、病のため退職しました。
その後病床でもできるからと、サイエンスライターとしてたくさんの著作をあらわしています。
『二重らせんのわたし』を読んだとき、科学者特に女性科学者の真摯な姿に胸を打たれました。彼女の自伝的な要素があります。
アメリカでの研究生活の厳しさ、未知のことに向かって進む粘り強さ。
それなのに、原因のわからない難病に研究を断念せざるをえなかった悔しさは想像以上だったと思います。
それでも病床で、科学の最先端の情報を一般の人にも伝えるという次の使命を見出して、何冊も「よく売れた」科学本を出しています。
生命科学の不思議を、人々と分かち合いたいという気持ちがあふれるような本です。
一般向けに優しく書いたと言っても、内容は私の理解を超えて難しく感じるところもあるのですが、科学ってなんて人を魅了するものかしらと思わせてくれました。
病の重さ
病名が分からない病に長年苦しんで、やっと効果の出る薬に巡り合ったということをNHKの番組で見ることができました。
その間の病気との闘いと、医師・家族とのかかわりを具体的に書いたのがこの『ふたたびの生』です。
こんなに苦しい闘いだったとは、というのが一番の感想です。
一度は尊厳死を考え、家族や医者に訴えます。そのときの記述は重いです。
栄養摂取も排尿もチューブに頼り、身体のあちらこちらに鎮痛剤では効かない痛みを抱えて寝たきりの状態が続いているのです。
介護する家族も耐えられないと悲鳴を上げ、それを申し訳なく思う患者側も苦しくてたまりません。
誰もそばにいないときは、痛い苦しいと身もだえしても自分一人の苦しむですむから気が楽という状況は私の想像を超えています。
乗り越えたからこそ
よく効く薬が見つかり、病名への手がかりが見つかっていく(自分でもリサーチに積極的に協力)過程は、サイエンスライターならではの物語です。
長く苦しい病気でも失われなかった彼女の人間性と意思の強さが、たくさんの場面で発揮されています。
寝たきり生活の後、痛みを取り除くことができたのでベッドから起き上がろうとします。
でも、骨も筋肉もすっかり衰えてしまっています。
そのあとのリハビリで回復する過程の描写も克明です。
足裏の骨の存在に気づくところなど、ヨガ的にもなるほどと思います。
すべての筋肉と関節、神経が複雑に関連して身体を支え動かしているのです。
人間の身体は本当に精巧にできています。
家族
今回この本で家族のことがたくさん書かれています。
パートナーである夫君の奮闘と衰弱ぶりが具体的です。
それをなすすべもなく見守る桂子さんの心の苦しさも繰り返し書かれています。
子どもたちがどのようにかかわったかも知ることができます。
自分がすべき皿洗いをする夫君に切ない思いを抱いた桂子さんが、今は彼より一日でも長生きして残されるものの寂しさを味あわせたくないと願っています。
夫君の老後のお世話を少しでもできたら、と切に願っているのです。
苦難を乗り越えた聡明なお二人の、誠実で真摯な愛を感じます。