歴史をおさらいするために
永井路子をすてーじ・刻の読書室で取り上げ、とても面白かったので、何冊か図書館にリクエストをしています。
そのまえに、kindle で見つけたこの本を購入しました。
思いがけずたくさんいた事を知った女帝のエピソードが全部載っているからです。
それほど歴史に詳しくない私は、大化の改新とか壬申の乱の人間関係がイマイチ理解出来ていないのです。それで、いつも手元に置いて見返すために女帝全部が載っているこの本を購入しました。kindle 版で購入です
あといくつかの永井作品を図書館にリクエストしています。
当時の結婚形式
当時は妻問婚ということは知っていましたが、永井さんはただ男が女性のもとにかようだけでなく、権力財産ともに女性の家の力が強く反映されていると主張します。
好きとか嫌いとかでなく、どの男性を取り込んで後継者とするかは女性の家の大問題であり、男性はどの家からの申し出を受けるかで、どの派閥に属するかを決められてしまいます。
天皇家より強力な家
明治から第二次大戦後までの歴史観では、天皇家が王家として最強唯一の家系としてきました。でもそれは体制に作られたもので、本当は違うのではないかと永井さんは考えます。
天皇家に妃を送る蘇我氏の力は、その遺構からみても天皇家を凌ぐものだったのではと考えます。
道鏡のこと
永く道鏡は女たらしで称徳天皇が異常なセックスマニアのようにでっち上げられていると、永井さんは憤慨します。本当は日本版の「アベラールとエロイーズ」にも匹敵するほどの不朽の純愛物語だったかもしれないのだそうです。
古代から平安朝にはあった物語精神が、平安後半から堕落の一途をたどってしまったkとを嘆いています。
歴史のゆがめられ方
永井説では、古代の女帝たちはたんなる宗教的な拝み屋や、男性の皇位継承者が幼い場合の中継であったという長い間の歴史観を否定します。
古代の天皇は男性と女性が半分ずつ登場し、女帝の在位期間も決して短くはないことをあげ、政治家としてしっかり仕事をしていたはずだとしています。
武士が台頭し父系制社会が確立するにつれて、表面上は表れてこないけど、天皇や将軍の妻や母として、そして「乳母」として政治戦略に力をふるったに違いありません。
それがいつの間にか、かよわく政治力のない、運命に流されるままの女性ばかりが物語でも描かれるようになっていったのは、どうしてでしょう。
時の権力者、体制側にとって、そういう女性のほうが都合がいいということだったのでしょう。
永井路子が目指したこと
そんな本来力強い女性が、ひたすら男性の陰に隠れるように生きた時代が続き、兵隊になる男性だけが重要とされる戦時下に成長したのが永井路子です。
終戦とともに、今まで教えられてきたことが嘘だったという価値観の大転換を経験して、本来女性はどうだったかを歴史の中に探していったのが永井路子の作家人生だったかもしれないです。
古代から中世・江戸時代の強くたくましく生きた女性たちの姿を私たちに描き出してくれます。
『茜さす』(上)(下)
『美貌の女帝』
3冊とも古代の女帝たちの本当の姿を生き生きと描いてくれます。
『茜さす』厚い2冊組でしたが、一気に一日で読んでしまいました。
おもしろかったです。
持統天皇に心を奪われどんどんその生涯を探っていく若い女性のお話です。