70歳過ぎて自在に生きる ほいみんの日記

断捨離から、ヨガ・インド哲学・音訳へと関心が移っています。

『ハンチバック』市川沙央 著 本を読むこと、読めない人々のこと

芥川賞

授賞式のときほかの受賞者と一緒に壇上にいたので、

ご自身が障がい者と言うことを知りました。

そのあと執筆を含めた日常の取材動画も見ました。

障がい者の本音をあからさまに描いたと言われる受賞作。

図書館にリクエストしていた『ハンチバック』が

ようやく私の番になって手に入りました。

 

本を読むこととか書くこと

主人公は遺伝子情報の不具合で、姿勢を保つことができません。

本を持つこと、ページをめくることもできません。

そんな彼女は、「インクの匂いが好き」という紙の本を愛でる人に悪口をあびせます。

通信制の大学で学び、ウェブライターをしている彼女にとって、

必要不可欠な読むことと書くこと。

デジタルガジェットを使いこなしても、

困難はつきまとうことでしょう。

 

本を読めないのは視覚障がいの方だけではないことを、

改めて思い知らされました。

録音図書を作ることも、

そのほかに情報にアクセスするための手段をたくさん用意することの必要性。

そんなことを多数の健常者につきつける、

その強い意志を作者に感じました。

 

書くことで自分を確認

経済的に必要ではないけど、バイトでウェブ記事を書いています。

家から出られない障がい者でも、

子供が小さいシングルマザーでも

お金を稼ぐことはできるのが現状。

 

こたつ記事(取材なしでネット情報だけでつくる)のほかに、

主人公はいくつかのプラットフォームでつぶやいたり、訴えたり、創作したり。

自分の妄想の世界をいくつも持つことができます。

 

読むことと書くことは、

家から出ることのほとんどない彼女の、社会活動の発露。

生きている、感じている、考えていると発信しているのです。

 

彼女の障害は重く毎日は厳しいです。

でも同情してほしいのではない、という彼女の強い気持ちはわかります。

読後感は重いかとおもえば、

なんだかすがすがしいのはどうしてかしら。