録音を終えて
本を一冊録音し終えました。
読んで、聞き直して、訂正して、また聞いて。
一度読んだだけでは読み取れなかった、著者加賀美さんの心が深くわかるようになりました。
忘れないために、ブログに書き残します。
なんともいえない
農作業にたくましく従事する女性達が、伝統の郷土食を作りその味を
「なんともいえない旨さだよ」と誇らしく繰り返します。
その言葉に加賀美さんは、言葉や説明を越えた魅力が潜んでいると直感します。
何ともいえない何か・・・ただ旨いだけでない、ただ美しいだけでない、ただ知識があるだけでない、ただ鋭敏なだけでない、ただ巧いだけでない何か・・・・。
加賀美さんはそれを、自分の職業にも引きつけて考えます。
読むこと一つを取り上げても、引きつける何かを表現できる人と、ただきちんと読むだけに終わってしまう人がいる。
その何かがあるかないかで、どういう何かがあるかで、人でも物でも技でも、魅力において大きく変わってしまうのである。
ただきちんと読むだけの人、ここでとどまってはいけないのですね。
加賀美さんの読みが魅力的なのは、この何かがあるからなのです。
それは、準備できるだけ準備し、練習を積み重ね、自分の頭で考え、自分の心で感じることをいとわず生きてきたからなのでしょう。
その人がいると、その物があると、その技に接すると、何だか嬉しくなる、何か伝わってくるものがある。
いつまでも聞いていたい読み、私が目指していて、加賀美さんがそのお手本だと思う読みなのです。
とっても難しい。
それは決して曖昧なものではなく、深い所から醸し出される、その人のあり方、物のあり方、技のあり方から来るものなのであろう。
曖昧でないとは、まず技術と努力に裏付けされた確かな安定感だと思います。
深いところから醸し出されるのは、長く生きてきたものの得意な部分のはず。
いい味を出して、その人といると楽しいと思ってもらえる人になりたいです。
校正作業
録音を終えたら、校正作業です。
アクセントや誤読、間の取り方など訂正がたくさんあります。
パンチインといって、その部分だけを録音し直すのですが、
前後とのトーンをそろえるのが難しいです。
読みの早さも、読みの最初は慎重ですがだんだん読み進むにつれて早くなりがち。
口中音、滑舌の甘さ、なんとかなるのかしらと不安にもなります。
一冊を通して録音してみて、自分の音訳技術の未熟さがよくわかります。
わかったところからまた、次のステップに向けてスタートです。
次はどの本を読もうかしら。
楽しみは続きます。