70歳過ぎて自在に生きる ほいみんの日記

断捨離から、ヨガ・インド哲学・音訳へと関心が移っています。

『夢を売る男』百田尚樹著 私はうっかり信じてしまいそう

本当にあるお話

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『夢を売る男 』に出てくることって本当にありそうです。ちょっと調べてみたら、モデルとした会社は文芸社という会社で、その会社のHPには各種文学賞の作品募集がでていました。

本の内容と同じような経験した人がたくさんいるらしいです。

 

内容は

自費出版専門で詐欺まがいの商売をしている編集者が主人公。

自分の本を出版するのに、たくさんのお金を出してしまう人たちが出て来ます。

小説家になりたくて書いている人だけでなく、書く気がなかった人までその気にさせてしまう敏腕ぶり。

出てくる人は


*新人賞に応募する作家志望の青年
*夢だけは大きいフリーターの自意識過剰青年
自己実現の夢を子供に課している教育ママ

 

本を出させるまでも巧妙ですが、クレームをつけられてからの切り返し方も「そういう手があったのね」というくらいにたくさんの手札を持っています。

 

うまい、本当にことばたくみ、ああ言えばこう言うという語彙と発想の豊かさ、私だったらすぐ騙されてしまいそう。

 

わたしはだまさやすい

私がもっと書くことの修行を真剣にしていて努力家だったら、この手の話にすぐだまされてしまいそうです。

 

短いものなら書けるけど、長いものを書く力量と根気がないことを知っています。

 

学生時代に友達と同人誌めいたものを作っていて、お話しづくりが本当に難しいことを身に染みました。

 

原稿用紙10枚くらいの小話でも、うんうん唸って書いていました。

 

もし私が文才があり、書き続ける情熱を持っていたら、すぐ話に乗りそうでこわかったです。

本を読みながら、登場人物の気持ちに同化してしまいそうでした。

 

だますのではなく夢を売っている

だから主人公のこの言葉は同感です。

賞を取るか取らないかわからない長編小説を最後まで書き切るという人間は、自分の作品を傑作と信じている。だから傑作だと言ってやれば、疑う人間はいない。

そして、売れなくても本を出せたということで一定の満足を得ることができます。

だから「夢を売る」男なのです。

 

お金を出させて、逆に感謝される

心に闇を抱えた人間は本を出すことで、憑きものが落ちたみたいになることがすくなくない。
この商売は一種のカウンセリングの役目も果たしているんだよ。

 

心に屈折したものを抱えていたら、書かなくてはいられない気持ちになるかもしれないです。

 

若い人なら、失恋とか男にだまされたとかね。 

私たち世代だったら、親の介護問題とか相続でもめた家族関係とか。

自分の心の中に納めておくには辛いこと、だれかにわかってほしいと思うことありますよね。

 

出版業界の実録ルポみたい

自費出版の仕組み、取次会社のことなど出版業界のしくみがよくわかります。

 

どんなに小説が売れないかは知っているつもりでしたが、実情は本当に惨憺たるものなのでしょう。

小説家で生活できる人が、どんなに少ないかの説明も説得力があります。

 

小説を読まない人が多いのです。

日本人が本を読む時間は1日平均13分しかなく(2011年「日本人の生活時間2010」NHK刊)、それも雑誌や自己啓発本やハウツー本が多いのではないでしょうか?

振り返って見て、私も私の周りでもそうです。

 

それでも、自費出版が多くてお金もうけになるのは、書く方の事情です。

小説が売れようが売れまいが関係ない。物書き志望が増えているのは、ブログやSNSの隆盛による必然なんだ。・・・今は、皆が舞台に上がりたがって、観客は一人のいないという状況なんだ

観客無視のひとり芝居ってわけですね。

確かにお芝居やダンス関係の自主公演で切符を自分で買って、家族友人に配っているのと似ています。 

 

ブログ書いている人は読んだ方がいい 

 

主人公は自費出版のターゲットを、新人賞応募者からブロガーに変えていきます。

 

読者が少ないのに毎日更新しているブロガーなんですって。

私も気をつけなくては(笑)

毎日、ブログを更新するような人間は、表現したい、訴えたい、自分を理解してほしい、という強烈な欲望の持ち主なんだ。こういう奴は最高のカモになる。

 

たくさんの読者がいるブロガーさんはもう大手出版社が対応しています。

そういう有名ブロガーのように、いつか自分も認められて本を出せると思いながら頑張っている人が多いのでしょう。

うちが狙うのは、大手が見向きもしないようなブログだ。大事なのは更新数だ。誰も見ていないブログをせっせと更新するような奴は必ず食いついてくる

 

ブログを書いている人は、この本を読んで免疫を作っておくといいです。

 

世の中、そんなに甘い話があるわけではないですから。

 

ちなみに

私の知人は「エッセイ塾・ 自分史塾」を主宰していて、その生徒さんたちが何冊も自費出版で本を出しています。

70歳代80歳代の女性が、なかなか読みごたえのあるエッセイを書いています。

遺言書代わりに自分の生い立ちなんかを書き残すひとや、どうしても伝えたい戦争体験とか。

本つくりも良心的な価格で喜ばれています。

 

今は自費出版もかなり安くできますよ!!

 

夢を売る男 (幻冬舎文庫)

夢を売る男 (幻冬舎文庫)