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久しぶりにゆっくりひとりで家にいるので、大きなテレビ画面で映画を見ました。
いつもはパソコンやiPad でアメリカのテレビドラマを見ているのが多いのです。
映画は一人で見るのが好きです。
今日もある場面で涙がこみ上げ、誰もいなくてよかったと思いました。
「血と骨」
ビートたけし主演とは知りませんでした。
原作を読んだことはなかったのですが、とんでもないような実体験にもとづいた重い内容の小説だという書評を読んだ記憶があります。
在日作家の作品にはトラウマがあります。
梁石日の「火山島」を雑誌「文学界」連載中に読んでいて、その内容が辛くて辛くて苦しくなったのです。
在日作家の辛い実話物には目をそむけていたかったのです。
「血と骨」の映画では、在日ゆえの差別とか政治的な話はあまり出てきません。
そのかわり暴力場面がたくさん出てきます。
とても事実とは思えないような派手さなのですが、理不尽で破壊的な暴力は実際はそれ以上だったらしいです。
男の暴力に耐え続ける女性たちは、悲しいです。
そして強いです。
私にはとても真似できない強さとたくましさで働き続けています。
でも、暴力的になってしまう男たちの側にも、求めても得られないやるせなさがあり、暴力で憂さを晴らそうとする弱さを感じました。
でも、暴力はいけない。
在日と差別
子どもの頃、どうして朝鮮の人たちが日本にたくさん住んでいるのか知りませんでした。
わたしの近所にも友達にもそういう人はいなくて、家族での話でもあまり出てきませんでした。
穏やかで保守的な価値観に守られた子供時代だったのだと思います。
初めてその存在をはっきり意識したのは、中学の卒業式を控えたときです。
卒業証書の名前が日本名の通称でない本名の人が数人いたからです。
そのなかの一人とは、授業中もよく議論をする仲でした。
東西の冷戦中で、ドイツのベルリンの壁がまだ存在していました。
東側社会主義の擁護をする彼に、私は「ベルリンの壁を東から西に乗り越えようとする人はいるけど、西から東に行こうとする人はいないでしょ。西の自由のほうが魅力的なのよ」
そんなふうに、西側資本主義の自由と繁栄を擁護していました。
彼が「自分の出身のせいで、血のせいでそう思うのかもしれない」と言ったのですが、そのときはその言葉の重さを思い諮ることができませんでした。
在日でも日本人でも、思想や信条は変わりなく自由だと思っていたからです。
日本で生まれ育った友達なんだから、同一価値観で生きているとしか思えなかったのです。
その後、強制連行のことなどを学び、在日の人たちが差別されていることを知るにつれて、自分がなんて浅い考えだったのだろうと恥じる気持ちになりました。
今でも思い出す未熟で幼かったエピソードです。
自分の心の中で差別や偏見がないだろうかと、ときどき考えます。
差別も偏見も確実にあるのです。
なかなか払しょくできないでいます。
私の原点
強制連行で連れてこられた朝鮮人女性が、年老いてから日本語を学ぶために夜間中学に通うドキュメンタリ―を見たとき、こういう人たちの力になりたいと思いました。
理不尽に連れてこられ、教育を受ける機会もなく必死で働いた人たちが困っているのです。
”差別と偏見に苦しむ人の側に寄り添いたい‘
というのが、若いころに考えた私の生き方でした。
でもこの映画を見てちょっと考えが変わりました。
在日の人は困っている人ではなく、置かれた場所でしっかり生きています。
かわいそうだから助けてあげるなんて、思い上がっていました。
わたしなんかより、ずっとたくましくて強くて働きものです。
私が見習うところ、学ぶところがたくさんあるのです。
映画の中に出てくる女性達の過酷さに比べて、わたしはぬるま湯のような穏やかな人生を送ることができています。
少しの困難やトラブル、理不尽さなんて笑って心穏やかにやり過ごしたいです。
そんな強い心を持ちたいと思わせてくれた映画でした。