読書室
元司書の方を講師に女性作家と作品について学ぶ会で、事前に作品を読んでいかなくてもよくて、お茶とお菓子も出る気軽な会です。
もう数年続いているので、たくさんの女性作家を取り上げ、その作品と作家の生き方を取り上げてきました。
講師の方の準備がすばらしく、明治から昭和にかけての女性作家の生まれた年と死んだ年を年表に並べてくださいました。
同時代に誰がいたのか、終戦の時何歳だったか、などが一目でわかります。
終戦の時、子供だったか、思春期だったか、数年の違いでものの考え方を大きく変えてしまうようです。
作家の生い立ちを知ることで、作品に込められている思想を探る手がかりになります。
有吉佐和子
今回取り上げた有吉佐和子は、昭和20年の終戦の時、14歳で静岡に疎開していました。
本をたくさん読む早熟な子供で、父親の仕事の関係でジャワに住んでいたこともあり、物事を客観的に見ることができるようでした。
大学在学中から「演劇界」の懸賞俳優論で入選したり25歳で芥川賞候補となるなどし、「才女」と言われます。
でも「才女」とは実生活からではなく、頭の中で物語をこね繰り回して作り上げたというような揶揄する意味合いがあったらしいのです。
男性中心の文壇の中で、まっとうに評価されなかったらしいとは知りませんでした。
たくさんの映画化された作品、社会的にも影響力のある「恍惚の人」「複合汚染」などをかいていて、文壇でも大きな存在で尊敬されていたような印象がありました。女性にだけ人気だったのでしょうか?
女性の一代記って、男性は読もうと思わないのでしょうね。
私たち女性にとっては、勇気をもらったり、一緒に怒ったり悲しんだり、人生を豊かに生きることを教えてくれる大切な作品がたくさんあります。
有吉佐和子の作品もたくさん読みました。
借りてその日のうちに読み終えました。面白い!!
紀ノ川
今回はたくさんの有吉作品のなかで「紀ノ川」「有田川」「鬼怒川」の3作品を取り上げる予定でしたが、彼女の生い立ちと「紀ノ川」だけで時間が無くなってしまいました。
「紀ノ川」は彼女の自伝的作品なので、どんな気持ちで自分の母親・祖母・そのまた祖母という女性たちを描いたかを話し出すと、話題と意見が尽きません。
時代の制約の中で、どんなふうに抗い、従属し、反抗していったのかです。
賢さ、心の深さ、弱いと見せて周りを取り込んでしまう強さなどが語られます。
命を削って書き続ける
有吉佐和子は幼児から病弱だったらしく、作品を書き上げると精根尽きてしまうのだそうです。作品に書いた女性同様、ひたむきに書き、生きたといえる生涯です。
そんな風に命を削って書くところや、死んだあとの世評が厳しかったことなど林芙美子と似ていると講師の方のお話がありました。
私がそれと対照的だと思ったのが宇野千代です。
同じようにひたむきな女性を書いていますが、作家の性格は明るく長寿でした。
彼女は書くことに行き詰った時、中村天風の天風会に入り「心身統一法」でまた書けるようになったそうです。
天風は日本初のヨーガ行者と言われて、宇野千代はヨーガをしていたともいえます。
才能のある方が命を削ってしまい、道半ばで倒れてしまうのはもったいないと思います。
かといって、みながヨガをして元気で長生きをしましょうと言うのはちょっと違います。
人間ってそんなに簡単単純なものではありません。
だから、たくさんの小説が書き続けられ、私たちに感銘を与えてくれます。
私も、「ヨガをしていれば身体は健康になり心も穏やかになって何もかも解決します」という短絡思考にならないように自戒します。
ちょっとヨガをしてその効果を実感すると、他人に偉そうになってしまいがちだからです。